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水銀

元素記号:Hg 英語名:Mercury

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

80

200.59

-38.87

356.58

0.34

 水銀は銀白色の重い金属です。地殻には 0.05 ppm (0.000005%)ほど存在します。水銀は室温で液体として存在する金属元素ですが、 -38.83℃まで冷却すると固体になります。人類は古くから水銀を利用していました。中国では、紀元前二千年頃、すでに水銀を利用していたという記録が残っています。水銀鉱山として有名なスペインのアルマーデン鉱山は紀元前5世紀から採掘が行われており、世界最古の鉱山の1つと言われています。水銀の発見者を特定することは不可能です。元素名の英名 Mercury はローマ神話に登場する商売の神メリクリウス Mercurius に由来します。元素記号 Hg はラテン語 hydrargyrum {hydro (水の意)と argyrum (銀の意)の合成語。水のような銀の意。}が起源です。和名は中国から伝えられたもので、由来は元素記号と同じです。ドイツ語では Quicksilber (素早い銀の意)と呼ばれています。
 水銀の鉱石は辰砂(HgS)です。水銀は辰砂を加熱処理することによって得られています。鉱山によっては、遊離した粒状の自然水銀が含まれており、古い時代には自然水銀が利用されていました。水銀の特徴的な性質として、多くの金属と軟らかい合金(アマルガム)を作ることが古くから知られています(コラム参照)。水銀はガラスに着きません。温度によって水銀の体積は大きく変わるのですが、変化の割合は、ほぼ一定であることから、温度計や体温計に利用されています。比重(約13.5)が大きいので圧力計の高さを抑えることが出来ることから、気圧計や血圧計にも使用されています。殺菌作用があるので医薬品にも使用されていました。その代表例が赤チンです。蛍光灯の中には水銀蒸気が封入されており、蛍光体が発光するためのエネルギー源(紫外線)を発生させています。水銀は最初に(1911年)発見された超伝導物質です。

辰砂 自然水銀
HgS Hg
辰砂 自然水銀
Almanden Mine, Ciudad Real, Spain

コラム「商売の神メリクリウス」
 商売の神と呼ばれるメリクリウスは翼を持っており、機動力に富んだ動きの素早い神です。水銀は液体として生物のように素早く動き回ることができます。元素名の英名 Mercury はこれに因んで命名されました。また、Mercury は水星の英語名としても使われています。水星は太陽に最も近い軌道を廻っている惑星です。そのため、太陽との位置関係(太陽の西で見えたり、太陽の東で見えたりする位置関係)が素早く変化します。これが惑星名として使用される由来です。科学分野以外でも、メリクリウスに因むものが存在します。一橋大学(前身は東京商業学校)の校章にはメリクリウスの杖が描かれています。

コラム「水銀合金アマルガム」
 水銀は多くの金属(例外は鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム等)と溶け合い、容易に合金を作ります。水銀との合金は軟らかいペースト状のものが多いことから、ギリシャ語の malagma (軟らかい物質の意)に因んで、アマルガムと呼ばれています。
 代表的な利用例は、金の精製です。まず、金を含んでいる泥に水銀を混ぜてアマルガムを生成させ、金を抽出します。次に、加熱によって水銀を蒸発させると高純度の金が得られます。同様の手段で、金メッキも行うことが出来ます。奈良の大仏はアマルガムを利用して金メッキされました。記録によると、820 kg もの水銀が使用されたそうです。作業に従事した人々の健康に深厚な影響を与えたと推測できます。
 その他の利用例を3つほど紹介しましょう。亜鉛やカドミウムのアマルガムを使った電池は電圧が極めて安定(100万分の1以下の精度のものもある)した特殊な電池です。標準電池として実験などで重宝されています。鏡のガラスの裏に塗られている反射剤は、鉛、スズ、ビスマスのアマルガムです。歯の治療にも、銀やススのアマルガムが利用されています。

隣接元素
カドミウム
水銀 タリウム
ウンウンビウム

  

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