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ジスプロシウム

元素記号:Dy 英語名:Dysprosium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

66

160.50

1412

2562

0.3942

 ジスプロシウムは柔らかい銀色の金属です。地殻には6ppm(0.0006%)ほど存在しています。フランスのボアボードランは、1886年、ホルミウム(Ho)と考えられていた物質に、未知の元素が含まれていることを発見し、分離することに成功しました。当時の物質の分離方法は、水に対する溶解度(溶けやすさの程度)の差を利用しています。物質を水に溶かし、その水を濃縮させ、水の中へ出てきた結晶を取りだしていました。ただ、希土類元素は性質が似ているため、溶解度の差がたいへん小さく、何度も、分離を繰り返えすことが必要でした(2万回繰り返した科学者もいたそうです)。ボアボードランもたいへん苦労したことから、ギリシャ語のdysprositos(得難い、近づき難いの意)に因んで、ジスプロシウムと命名しました。
 ジスプロシウムはゼノタイムから得られています。ジスプロシウムの身近な使用例は蛍光塗料のルミノーバです。日光を10分間当てておけば、10時間以上も光ります。ルミノーバには発光体としてユウロピウムが含まれており、ジスプロシウムは光エネルギーを蓄えて、ユウロピウムが発光することを助けています。また、テルビウム-ジスプロシウム-鉄合金には、磁力で大きく伸び縮みする性質(参照:テルビウム)があり、プリンターのヘッドで活用されています。

YPO4

Y2FeBe2(SiO4)2O2

ゼノタイム

ガドリン石

ゼノタイム

ガドリン石

Ibitiara, Bahia, Brazil

愛媛県 北条市 高縄山

コラム「イットリウム酸化物から発見された希土類元素」
 ジスプロシウムという名前が示すように、希土類元素の探求は近づき難いものでした。1794年に、ガドリン石からイットリウムの酸化物が発見されたのが、希土類元素の研究の始まりです。このイットリウム酸化物には、別の希土類元素が多数混ざっており、最終的には9種類の希土類元素がイットリウム酸化物から発見されました。その経緯を下表にまとめています。
 まず、イットリウムの酸化物からイットリウム以外に2種類の希土類元素が、1843年にモサンダーによって発見され、テルビウムおよびエルビウムと命名されました。エルビウムと考えられていた物質から、1878年にマリニャックによってイッテルビウムが、その翌年にニルソンによってスカンジウムが発見されました。さらに、エルビウムと考えられていた物質から、1879年にクレーベによって、ホルミウムとツリウムが同時に発見されています。ホルミウムからは、ボアボードランによってジスプロシウムが、1886年に分離されました。最後に見つかったのはルテチウムです。イッテルビウムと考えられていた物質から、1907年に、ユルバンによって発見されました。
 イットリウム酸化物から希土類元素を見つけ出す研究が完了するのに、100年以上の歳月を要しました。複雑な研究の経過から化学者達の苦悩を知ることが出来ます。

イットリウム酸化物から分離された希土類元素の発見史
イットリウム
(1794)
イッテルビウム

イッテルビウム

イットリウム

テルビウム

(1878)

スカンジウム


ルテチウム
(1907)
(1843)
(1879)

エルビウム

エルビウム

エルビウム

(1843)

ホルミウム
(1879)

ツリウム
ホルミウム

ジスプロシウム
(1886)

(1879)

隣接元素
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テルビウム ジスプロシウム ホルミウム
カリホルニウム

  

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