コラム「金の色彩」
金の最大の特徴は美しい金色です。このコラムでは、金の色彩に関する3つの話題を紹介しています。難しい内容も含まれていますが、例え話を利用して、分かり易く解説しました。頑張って、読んでください。 |
1.なぜ、金色なのか? |
ほとんどの金属元素が鉄やアルミニウムのような銀白色を呈しています。金色の金属元素は金と銅とセシウムの3つのみです。その理由を一言で言ってしまえば、金と銅とセシウムは、赤い光や黄色い光は反射するが、青色の光を吸収するので、反射光は赤色と黄色が混ざった金色になると説明することが出来ます。その他の金属は可視光のほとんどの成分を反射するので、銀白色になります。ここでは、次の話題の準備も兼ねて、詳しく、金の発色原理を紹介しましょう。
まず、プラズモンと呼ばれる粒子を説明します。電子(電流を流すことを担っている)は金属の中で波のような集団運動を起こすことによって、金属全体内における電子の分布の偏りを解消しようとしています。その波のような集団運動を裏でコントロールしているかのように振る舞っている粒子が存在しているように思いこむことができます(実際は存在していません)。その様な粒子はプラズモンと呼ばれています。理解を助けるために、ここで、例え話を導入しましょう。子供が遊んでいるプールを思い出してください。子供が動くことによって、プールに波が発生し、深さの偏りが生じます。しかし、波は衰えて、深さの偏りは無くなります。水の性質と重力が原因で深さの偏りは消滅するのですが、次のように考えることもできます。子供の動きによる波を打ち消すように、謎の人物が、プールの水の中で動いていると考えることもできます。この例え話では、プラズモンは、その謎の人物にあたります。
次に、プラズモンによって金属の色が決まる様子を紹介します。プラズモンによって生じた波のような運動は、金属に降り注ぐ光に対して重大な影響を与えますが、光の色彩によって、その影響が異なっています。太陽の光がプリズムによって七色に分かれことより、光は様々な色彩の光が混ざっています。光には波のような性質があり、波の違いが色彩の違いに対応しています。波は繰り返しが伴う現象です。その繰り返しの1秒間の回数は振動数と呼ばれています。紫色の光は赤い光に比べて、振動数が大きく、エネルギーも強くなっています。プラズモンによる運動も波のような運動ですから繰り返し現象が生じており、その振動数は金属元素によって決まっています。金の場合、プラズモンの振動数が一部の可視光の振動数と一致しています。金のプラズモンの振動数よりも小さい振動数を有す(鈍感な)可視光(赤色や黄色の光など)は、金の電子の妨害を受けて、反射されてしまいます。逆に大きい振動数を有する(機敏な)可視光(青い光など)は、金の電子の妨害を受けないため、反射されず、吸収されてしまいます。この様にして、金(銅とセシウム)は赤色系や黄色系の光のみを反射することによって、金色になります。その他の金属の場合、可視光よりも大きい振動数を有する光(つまり、紫外線)なら吸収されますが、可視光はほとんど反射します。よって、銀白色になります。 |
2.細かくなると色が変わる |
アクアオーラ(金の被膜で覆われた水晶) |
上の展示品は、蒸着という手法で、金の被膜を覆わせた水晶です。水晶の色は無色透明ですが、金を利用して、水色(緑青色)に着色された合成品で、アクアオーラと呼ばれています。金の被膜で覆われているのに金色ではありません。その原因は、金には細かくなると色彩が変わるという特性があるからです。この特性の原因にも、プラズモンが関わっています。金原子の塊の大きさが極めて小さく(ナノサイズ)なると、プラズモンによる振動は塊の外面にも影響を与えるようになり、塊の表面も振動を始めます。プールで例えると、学校などの大型のプールで1人の子供が遊んでも、波が立つのは子供の周りだけで、プールの側面には影響がありません。しかし、家庭用のビニールのプールでは、プールの形が変動するぐらいの影響が発生します。この様な感じで、金の微細な塊の表面にも変動が生じ、振動が発生します。水晶に蒸着された金(アクアオーラ)の場合、その振動の振動数が、緑青色の光の振動数と一致します。もし、アクアオーラに可視光があたると、共鳴現象が発生し、緑青色の光の強度を、数100倍以上に強くして、反射します。その結果、金色の反射光は目立たなくなり、アクアオーラは水色(緑青色)になります。この様なプラズモンによる表面の振動と光の相互作用は、表面プラズモンの共鳴現象と呼ばれています。 |
3.様々な金の合金の色彩 |
金は強度を増すために様々な金属が混ぜられており、金の合金の色彩は変化し、色を用いた名称で呼ばれています。合金名と組成を下表に掲載しましたので、ご覧ください。 |