水銀は銀白色の重い金属です。地殻には
0.05 ppm (0.000005%)ほど存在します。水銀は室温で液体として存在する金属元素ですが、
-38.83℃まで冷却すると固体になります。人類は古くから水銀を利用していました。中国では、紀元前二千年頃、すでに水銀を利用していたという記録が残っています。水銀鉱山として有名なスペインのアルマーデン鉱山は紀元前5世紀から採掘が行われており、世界最古の鉱山の1つと言われています。水銀の発見者を特定することは不可能です。元素名の英名
Mercury はローマ神話に登場する商売の神メリクリウス Mercurius に由来します。元素記号
Hg はラテン語 hydrargyrum {hydro (水の意)と argyrum (銀の意)の合成語。水のような銀の意。}が起源です。和名は中国から伝えられたもので、由来は元素記号と同じです。ドイツ語では
Quicksilber (素早い銀の意)と呼ばれています。
水銀の鉱石は辰砂(HgS)です。水銀は辰砂を加熱処理することによって得られています。鉱山によっては、遊離した粒状の自然水銀が含まれており、古い時代には自然水銀が利用されていました。水銀の特徴的な性質として、多くの金属と軟らかい合金(アマルガム)を作ることが古くから知られています(コラム参照)。水銀はガラスに着きません。温度によって水銀の体積は大きく変わるのですが、変化の割合は、ほぼ一定であることから、温度計や体温計に利用されています。比重(約13.5)が大きいので圧力計の高さを抑えることが出来ることから、気圧計や血圧計にも使用されています。殺菌作用があるので医薬品にも使用されていました。その代表例が赤チンです。蛍光灯の中には水銀蒸気が封入されており、蛍光体が発光するためのエネルギー源(紫外線)を発生させています。水銀は最初に(1911年)発見された超伝導物質です。 |