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タリウム

元素記号:Tl 英語名:Thallium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

81

204.3833

303.5

1457

0.184

 タリウムは灰色の柔らかい金属です。地殻には 0.6 ppm (0.00006%)ほど存在します。タリウムはイギリスのクルックスによって発見されたのですが、この発見は偶然の産物でした。クルックスはセレンを研究するために、硫酸製造の副産物(セレンを含有することが知られていた)を入手し、セレンを分離しました。セレンとテルルは元素周期表で同じ列で隣接しており、化学的な性質がよく似た元素です。セレンが含まれているのならテルルも抽出できると考えたクルックスは、テルルの研究のために、セレンを分離した残留物を保管しておきました。その頃(1859年)、ドイツのキルヒホッフとブンゼンはスペクトルによる元素の分析方法を開発し、セシウムルビジウムを発見しました。1861年、クルックスはテルルの存在を確認するために、セレンを分離した残留物をスペクトル分析しました。不思議なことに、テルルによる黄色のスペクトルは確認されず、代わりに、鮮やかな緑色のスペクトルが出現しました。その緑のスペクトルは未知のものであり、新元素によるものであることが判明しました。元素名タリウムはギリシャ語 thallos (緑の小枝の意)に因んでいます。なお、同じ頃、フランスのラミーもスペクトル分析によってタリウムを発見しました。そのため、フランスではラミーがタリウムの発見者となっています。
 タリウムを主成分とする鉱物として、クルックサイト{(Cu,Ag,Tl)2Se}、ハッチンソナイト{(Pb,Tl)2(cu,Ag)As6S10}、ローランダイト(TlAsS2)、ユルバナイト(TlAs2SbS5)などが知られていますが、いずれも希産です。資源的には、銅、鉛、亜鉛などの硫化鉱物に微量に含まれており、精製の際の副産物として、タリウムは回収されています。タリウムは毒性が強い元素です。硫酸タリウム(Tl2SO4)はネズミやアリを駆除する殺鼠剤や殺蟻剤に利用されていました。水銀との合金(アマルガム)は -60℃まで液体状態を保持できる(参考:純粋な水銀では -38℃まで)ので、極寒地での気温を計る温度計に使用されています。光屈折レンズや赤外線のセンサー、γ線の測定器に使われています。また、タリウム系超伝導線材は他の超伝導線材(ビスマスやイットリウムを使用)よりも高温で超伝導を示すことから、製造技術の開発が進められています。

隣接元素
インジウム
水銀 タリウム
ウンウントリウム

  

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