セレンは柔らかい半金属元素で、地殻には0.05ppm(=0.000005%)程度しか存在しません。1817年、スウェーデンのベルセーリウスとガーンは、イオウを燃やして硫酸の製造する際に生じる沈殿物から、テルル(Te)に似た未知の元素を発見しました。テルルはラテン語のtellus(地球)に因んでいたので、新元素にはギリシャ語のselene(月)に因んでセレンと名付けました。
セレンを主成分とする鉱物として、セレン銅銀鉱(CuAgSe)やセレン銀鉱(Ag2Se)が知られていますが、希な鉱物であり、鉱石にはなりません。工業的には、銅の精錬時の副産物として、あるいはイオウを燃やして硫酸の製造する際に生じる沈殿物から、セレンは得られています。セレンには、光を当てると電気の伝導性が著しく上がるという、特異な性質があり、複写機に利用されています。セレン化カドミウム(CdSe)は赤色の顔料として、ペンキやプラスチックのほか、信号機の赤いランプにも利用されています。二硫化セレン(SeS2)には殺菌力があり、頭皮からほとんど吸収されないという特長があり、シャンプーに使用されています。 |