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セシウム

元素記号:Cs 英語名:Cesium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

55

132.9054

28.4

678.4

0.372

 セシウムは極めて柔らかい銀白色の金属です。地殻には3 ppm(0.0003%)ほど存在します。1860年、ドイツのキルヒホッフとブンゼンは、炎色反応(金属が炎で加熱されたときに光る反応)を利用して元素分析を行う装置(分光分析器)を開発し、鉱泉水に含まれている元素の確認を行いました。その際、未知の青い光が観測され、すぐに2人は新元素によるものと確信しました。元素名はラテン語のcaesius(空の青の意)に因んでいます。
 セシウムにはポルックス石(CsAlSi2O6)という鉱石が存在しますが、工業的にはリチウムの副産物として、リチア雲母から得られています。セシウムの化学的な性質はカリウムに似ており、リチア雲母中のカリウムの一部がセシウムに入れ替わっています。セシウムは最も反応性に富んだ元素です。窒素とも直接反応するため、真空管の真空度を保持するのに利用されていました。セシウムを使用したロケット推進エンジンは高出力が得られると考えられており、恒星間を飛行する宇宙船に利用できるのではと、期待されています。また、セシウム原子の電子状態が変化するときに、セシウム原子が放出する光を基準に、1秒の長さが定義されています。

K(Li,Al)3(AlSi3O10)(OH,F)2

リチア雲母

コラム「原子時計」
 原子の放出あるいは吸収する光の色(光の波の揺れる周期)は安定しています。この性質を利用したのが原子時計で、セシウム原子がよく使われています。セシウムの他に、ルビジウムや水素を使用したものも存在しますが、ルビジウムの原子時計は安価だが精度が悪く、水素の原子時計は精度は高いが寿命が短いという特徴があります。セシウムを利用した原子時計の仕組みを簡単に紹介しましょう。
 ガス状のセシウムにレーザー光線を、色を変えながら照射し、セシウムの様子を観察します。すると、セシウムの電子状態が突然変化します。この時のレーザー光線の色は一定です。原子時計の内部では、セシウムの状態が変化し続けるように、レーザー光線の色を微調整し続けています。ところで、光の色は、光の波が揺れる周期と対応しています。色を調整するとは、周期を調整することであり、時間を刻むことです。これが原子時計の原理です。セシウムを利用した原子時計は10万年に1秒しか狂いません。
 日本の標準時間は、東京都小金井市にある情報通信研究機構に設置された10台の原子時計の平均値を基に決められています。これらの原子時計は10万年に1秒しか狂わないほどの精度ですが、1日に2回、時間合わせが行われています。時間合わせの基準には、500万年に1秒しか狂わない超高精度のセシウム原子時計(世界に7台しかない)が使用されています。この原子時計で標準時間を刻めばよいと思われますが、連続使用することができません。よって、長時間使い続けることが可能な原子時計が、10台同時に使用されています。

隣接元素
ルビジウム
キセノン セシウム バリウム
フランシウム

  

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