インジウムは軟らかい銀白色の金属です。地殻には0.05ppm(0.000005%)ほど含まれています。1863年、ドイツのライヒは新元素タリウム(1861年にイギリスのクルックスが発見)を検出するために、亜鉛鉱石を分析しました。その途中に、見慣れない黄色い化合物が生成し、その化合物を熱して発せられる光のスペクトル分析を行いました。スペクトルのパターンは報告されていないものであり、未知の元素が含まれていることが判明しました。ライヒは色盲であったため、助手のリヒターに色彩を見てもらい、鮮やかな藍色のスペクトルであることを知りました。元素名はラテン語のindicum(藍色)に因んでいます。
インジウムは閃亜鉛鉱(ZnS)や方鉛鉱(PbS)から副産物として回収されています。世界最大のインジウム鉱山は日本にあります。北海道にある豊羽鉱山で産出する鉱石には高濃度(150ppm以上)のインジウムが含まれており、豊羽鉱山は埋蔵量でも産出量でも世界最大のインジウム鉱山です。インジウムは水と反応しないので、ベアリングボールなどのメッキに利用されています。インジウムの重要な半導体材料です。ケイ素やゲルマニウムの電気の流れをよくするために、少量のインジウムが混入されています(コラム参照)。インジウム化合物(インジウムヒ素、インジウムリン、インジウムアンチモン)も、半導体の性質を持った化合物(化合物半導体材料)であり、研究が進められています。 |