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ホウ素

元素記号:B 英語名:Boron

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

5

10.81

2300

3658

21.2

 ホウ素は硬くて脆い黒色の固体元素です。ホウ素は地殻には平均で 10ppm (0.001%) ほど含まれていますが、大部分は硼砂(ほうしゃ)などのホウ酸塩鉱物として、かつて塩湖だった場所に存在しています。人類は古くから硼砂をガラスやエナメルの原料として利用していましたが、硼砂の中に未知の元素が含まれていると考えられていませんでした。硼砂からホウ素を抽出するの初めて成功したのは、フランスのモアッサン(1892年)です。元素名 Boron は、イギリスの化学者デイビーが硼砂の英語名 borax に因んで命名しました。デイビーは当初、boracium と呼んでいましたが、ホウ素の性質が炭素に似ていたため、炭素の英語名 carbon にならって、boron と改名しました。参考までに、borax はペルシャ語の burah やアラビア語の bayraq (いずれも白の意。硼砂の色は白いものが多い。)に由来します。ホウ素は黒色の固体元素ですが、元素名は白が語源となっており、不思議な元素名です。
 ホウ素は硼砂から得られています。ホウ素を混ぜたガラスが耐火ガラス(パイレックス)です。ホウ素をガラスに混ぜると、ガラスの熱による伸び縮みが約1/3へ減る性質を利用しています。ホウ酸(H3BO3)を水に溶かしたホウ酸水は弱酸性の消毒液です。目薬に使用されています。炭化ホウ素(B4C)はダイヤモンドに次ぐ高い硬度を持っている物質です。ホウ素の金属化合物(TiB2、ZrB3、CrB2 など)は高温に耐える素材として、ロケットエンジンのノズルやジェットエンジンのタービンなどに使用されているほか、MgB2 は次世代の超伝導体(コラム参照)として研究が進められています。

Na2B4O5(OH)4・8H2O
硼砂
硼砂
Searles Lake, San Bernardino Co, California, USA.

コラム「新しい超伝導体:二ホウ化マグネシウム(MgB2)」
 2001年2月、新しい超伝導体である二ホウ化マグネシウム(MgB2)が、青山学院大学秋光研究室で発見されました。この発見はニュースでも大きく取り扱われたため、覚えている人も多いと思います。このコラムでは、超伝導体 MgB2 が注目される理由を紹介しましょう。
 超伝導体は一定の温度以下に冷却すると電気抵抗がゼロになります。超伝導体で作った電線に直流電流を流すと、電線内部の抵抗で生じるエネルギー損失が無く、電流は永久に流れ続けます。この電線をコイル状に巻いて電気磁石(超電導磁石)を作れば、永久に働く電磁石となります。さらに、超伝導磁石は非常に強力な磁石になるという性質があり、たいへん利用価値が高い磁石です。超電導磁石の利用はすでに始まっており、リニアモーターカーや、MRI(強力な磁力で脳の断層写真を撮影する装置)で使用されています。現在、超電導磁石に使用されている超伝導体はニオブ三スズ(Nb3Sn)が主に利用されていますが、Nb3Sn は-255℃まで冷却しないと超伝導体になりません。今回紹介する二ホウ化マグネシウム(MgB2)の場合、-234℃まで冷やせば超伝導体となります。温度差はわずか21℃ですが、必要な経費は大きく違います。Nb3Sn を利用する場合には、高価な液体ヘリウム(1リットルで数千円)を使うか、2つの冷却器を使って2段階で冷やさなければなりません。これに対し、MgB2を利用する場合には、液体ヘリウムは必要なく、冷却器も1台で十分です。これが超伝導体 MgB2 が注目される理由です。
 ついでに、電気抵抗がゼロになる仕組みを説明する理論を簡単に紹介しましょう。電気が流れるとは、電子が移動することです。この移動を妨げるのが抵抗です。この様子をサッカーで例えると、ゴールを目指して進んで行く選手(トップ)が電子で、それを邪魔する選手(ディフェンダー)が抵抗と考えることが出来ます。ディフェンダーがいるから、容易にゴールに近づくことが出来ません。自分1人で攻撃する様子を想像してください。ゴールに近づくには、大きな抵抗を受けてしまいます。次に、2人で攻撃する様子を想像してください。この2人は極めてパスが上手いとします。2人の場合、ディフェンダーは2人の動きに注意して、抵抗します。そのため、注意力が落ち、抵抗が弱くなります。超伝導体の中でも、2個の電子が対を成して移動する現象が起こっており、それが原因で電気抵抗がゼロになっているのではと考える理論(BCS理論)が提唱されています。BCSは発表者3人(バーディーン、クーパー、シュリーファー)の名前の頭文字を取ったものです。また、2個の電子の対は、クーパー対と呼ばれています。MgB2を調べたところ、電気はホウ素が存在している部分を流れていることが分かりました。MgB2の優れた特性(超伝導体になる温度の高さ)は、ホウ素原子は他の金属元素に比べてかなり小さいためであると考えられています。サッカーで例えると、ディフェンスの選手が小柄なため、2人のトップの攻撃に対する反撃が弱く、守備体系が乱れて、抵抗が弱くなるという傾向に対応しています。この様に、MgB2の仕組みが分かってくると、さらに優れたホウ素化合物が予測されています。マグネシウムの代わりにカルシウムや金や銀を使えば、より高い温度で抵抗ゼロになる超伝導体が作れるという計算結果も報告されています。

隣接元素
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ベリリウム ホウ素 炭素
アルミニウム

  

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