コバルトは地殻に約0.0025%程度存在します。銀白色の脆い金属です。人類がコバルトを利用し始めたのは大変古く、古代エジプト文明やメソポタミア文明でガラスに青色(コバルトブルー)を付けるのに使用されていました。コバルトの化学的な研究は、1735年にスウェーデンのブラントによって実施され、分離することに成功しました。元素名の由来は明確ではありませんが、ドイツの鉱山技師達が銀鉱石によく似たコバルト鉱石をコボルトと呼んでいたことに因むと言われています。コボルトとは坑夫の邪魔をするイタズラ好きの悪霊の呼び名です。銀が採れないのは悪霊の仕業と考えました。
コバルトは磁性(磁石になる性質)が強い金属で、生産量の約1/4が磁石の製造に消費されています。コバルトを混ぜた鋼は、粘り強く、高温に耐え、腐食されにくいので、切削工具や硬貨の表面仕上げに使用されています。人体に無害なので、バイタリウム合金(コバルト65%、クロム30%、モリブデン5%)が虫歯の治療に使用されています。また、コバルトはビタミン12を構成する元素です。
コバルトの主要な鉱石は、輝コバルト鉱(CoAsS)やコバルト華(Co3As2O8)等ですが、ニッケルや銅、鉄などを精錬するときの副産物としても得られています。
下の標本はコバルトの含有が原因で赤紫色に発色した苦灰石です。通常、苦灰石の色は白色、灰色、無色です。コバルト含有による赤紫色のものはコンゴ(旧ザイール)だけで産出される珍品です。 |