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ヘリウム

元素記号:He 英語名:Helium

*:ヘリウムは常圧では固体になりません。

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

2

4.00260

-268.9334

2.72x109

 ヘリウムは無色無臭の気体です。他の元素と化学的な反応を起こしません。宇宙では2番目に多く存在する元素ですが、地球の大気中には約0.0005%しか含まれていません。そのため、ヘリウムが最初に発見されたのは地球ではなく太陽でした。1868年8月18日にインドで皆既日食が観測された時、フランスのジャンサンとイギリスのロッキヤーは太陽コロナのスペクトル分析を行い、未知の元素によるスペクトルを、それぞれ独立に発見しました。ヘリウムと命名したのはロッキヤーで、ギリシャ語のhelios(太陽の意)に因んでいます。地球に存在するヘリウムが見つかったのは1890年です。アメリカのヒルデブランドは閃ウラン鉱(UO2)を酸処理すると反応性のないガスが発生することを発見しました。そのガスがヘリウムであることが判明したのは、さらに5年経た1895年でした。

太陽コロナ 閃ウラン鉱
太陽コロナ 閃ウラン鉱(UO2)(福岡県田川郡川崎町小峠安宅鉱山)

 大気からヘリウムガスを得ることも可能ですが、市販されているヘリウムガスは天然ガスから精製されています。高濃度(1〜7%)のヘリウムを含んでいる天然ガスがアメリカやアルジェリアで採取されており、ヘリウムの資源として利用されています。また、月の石には太陽から太陽風として飛んできたヘリウムが大量に打ち込まれており、核融合の原料(ヘリウム3)の資源として、月面基地などでの利用が期待されています。
 ヘリウムガスは軽くて(空気の7分1以下)、安定な(燃えたりしない)なため、風船や飛行船に使用されています。ただし、ヘリウム原子は小さく、ゴムやガラスを透過します。ヘリウムガスで膨らませた風船が、いつの間にか、しぼんでしまうのは、そのためです。ヘリウムは水に溶けにくい気体です。潜水で使用する酸素ボンベには酸素とヘリウムが封入されています。ヘリウムは血液(大量の水を含む)にも溶けにくいため、潜水病(ダイバーが水中から出た時に、血液中に泡が発生して血管を詰まらせる病気)が発症する危険性を下げています。また、液化ヘリウムは極低温(-269℃以下)が得られる安全な冷却剤として、超伝導磁石を利用するリニアモーターカーなどで使用されています。

コラム「様々なグループ名」
 ヘリウムは周期表の右端の列に位置しています。この列に並んでいる6つの元素(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、クセノン、ラドン)には共通する特徴があり、ひとつのグループとして取り扱われていますが、複数のグループ名が使用されています。ここでは、様々なグループ名を紹介しましょう。
 まず、6つの元素は化学的に安定した元素です。ヘリウムとネオンとアルゴンは他の元素と化学的な反応を起こしません(クリプトンとクセノンとラドンはフッ素と反応することも可能ですが、希なケースです)。それ故、不活性ガス(英語でinert gas)というグループ名で呼ばれています。別の元素と反応しない高貴な元素という意味で、英語ではnoble gasとも呼ばれており、専門家もよく使います。しかし、和訳の貴ガスという呼び名は普及していません(6つの元素の専門家は使用していません。別の元素の専門家が時々使用します)。
 通常、気体元素(水素や、酸素、窒素など)が気体として存在する時には、2つの原子が結びついた分子として存在しています。しかしながら、6つの元素は1つの原子だけで気体として存在しており、別の元素が分子として振る舞うようのと同様な振る舞いを、1つの原子だけで行っています。それ故、単原子分子とも呼ばれています。
 6つの元素の地球での存在度が、宇宙存在度と比較すると、かなり小さくなっています。ケイ素との存在比で比較すると、ヘリウムでは100兆分の1、ネオンでは400億分の1、アルゴンでは7000万分の1、クリプトンでは800万分の1、クセノンでは1000万分の1に、減少しています。ヘリウム原子は小さく、軽いため、地球の引力で大気中にとどめておくことができないため、特に、少なくなっています。希少な気体元素ということから、希ガス(英語でrare gas)とも呼ばれています。
 この様に、様々なグループ名が存在しますが、日本語では希ガス、英語ではnoble gasとrare gasがよく使われています。

コラム「ヘリウムの同位体比で覗く地球内部」
 ヘリウムには、ヘリウム3(2個の陽子と1個の中性子)とヘリウム4(2個の陽子と2個の中性子)が安定な同位体として存在しています。地球内部でのヘリウム3の生成は無視できるため地球内部のヘリウム3は、地球が誕生した時から存在していたものだけで構成されています。これに対し、地球内部でのヘリウム4の生成は無視できません。ウランやトリウムなどから放出される放射線(α線)によって、ヘリウム4は生成しています(アルファ線の正体はヘリウム4の原子核です)。ヘリウム4には元々存在しているものに、ウランやトリウムなどから生成したものが追加され、ヘリウム4の量は増えていきます。ここで、ヘリウム3とヘリウム4が存在する比率(ヘリウム3/ヘリウム4)を考えてみます。ヘリウム3の量は不変ですが、ヘリウム4の量はウランなどの量に比例して増えていきます。つまり、(ヘリウム3/ヘリウム4)はヘリウムとウランなどの比と考えることができます。以下に、ヘリウムの同位体比{(ヘリウム3/ヘリウム4)}によって解明された、地球の内部の様子を紹介しましょう。

中央海嶺玄武岩

海洋島玄武岩

片麻岩

ダイヤモンド

中央海嶺玄武岩

海洋島玄武岩

アカスタ片麻岩

ダイヤモンド

サンプル

領域
(ヘリウム3/ヘリウム4)を大気の値で割った値
 地球大気 1
 中央海嶺玄武岩  上部マントル 8
 海洋島玄武岩など  下部マントル 7 〜 35
 花崗岩や片麻岩など  大陸地殻 0 〜 1
 ダイヤモンド  太古のマントル? 0 〜 230
 隕石 100
 太陽 300

 上の表に、地殻やマントルのサンプルに含まれているヘリウムの同位体比をまとめました。ヘリウムの同位体比は小さい値(大気中のヘリウムでは、0.0000014)であるため、多少、比較が難しくなります。そこで、この表では比較が容易になるように、大気中のヘリウム同位体比で割った値を掲載しています。
 上部マントル起源の物質から生成した中央海嶺玄武岩に含まれているヘリウムの同位体比は、大気の値の約8倍となっています。中央海嶺玄武岩は大西洋の中央部の海底の他、太平洋やインド洋の海底でも採取されており、どの海域のものも、ほぼ同じのヘリウム同位体比を示します。つまり、ヘリウムとウランなどの存在比が、中央海嶺玄武岩が生成した領域(上部マントル)ではほぼ一定であることを示します。さらに言えば、上部マントル内では、マントル対流によって、物質がよく混ざり合っていることを示しています。
 下部マントル物質によって生成した海洋島玄武岩などに含まれているヘリウムの同位体比は、大きく変化します。中央海嶺玄武岩の値よりも大きいものが多いのですが、小さいもの(マントルへ沈んでいった海洋地殻の影響を強く受けていると考えられる)も発見されており、下部マントル内では物質がよく混ざり合っていないことを示しています。一番大きい値はハワイのサンプルから得られており、上部マントルの値を超えています。上部マントルと下部マントルに含まれているウランの濃度を比較すると、下部マントルの方が大きくなっています。にもかかわらず、ハワイのサンプルのヘリウムの同位体比が大きいことから、ハワイのサンプルを供給した領域(下部マントル)ではウラン以上にヘリウムが多く存在していると結論できます。
 大陸地殻にはウランやトリウムがマントルよりも多く含まれているために、ヘリウムの同位体比も小さくなっており、マントル起源の物質と区別することができます。
 ダイヤモンドのヘリウム同位体比も大きく変化しており、ヘリウム3が検出できないものから、非常に大きな同位体比をもつものが報告されています。ヘリウム3が検出できなかったダイヤモンドを構成する炭素は、マントルへ沈み込んでいった海底堆積物などに含まれていた炭素かもしれません。大きいヘリウム同位体比を示したダイヤモンドはたいへん興味深いサンプルです。ヘリウムの同位体比はウランなどの影響で時間と共に小さくなっていきます。このように大きなヘリウム同位体比は太古の時代の地球内部に存在していたことになります。地球が誕生した直後に生成したダイヤモンドかもしれません。さらに、驚きなのは、隕石に含まれているヘリウムの同位体比よりも大きく、太陽に含まれているヘリウムの同位体比に近いことです。隕石は地球の原料物質と考えられていますが、ヘリウムの同位体比は、隕石ではなく、太陽に含まれているヘリウムが、地球内部のヘリウムの源となっていることを示しています。

隣接元素
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水素 ヘリウム リチウム
ネオン

  

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