コラム「地球の年齢の決め方」
地球の年齢は約45.5億年とよく言われています。岩石や隕石の場合は、それ自身の形成年代を調べることによって、年齢が決めることができます。しかし、地球の場合、何を分析すればよいのでしょうか。地球で最も古い岩石であるアカスタ片麻岩は約39.6億年前に形成されました。地球物質で最も古い西オーストラリア産のジルコンの年齢は約42.7億年です。いずれも、地球よりも若い年齢です。地球は現在も生きている(火成活動が行われている)惑星です。そのため、地球誕生時に形成された岩石や鉱物は残されていません。では、どのようにして、地球の年齢が決められたのでしょうか。 |
地球の年齢 = 隕石の年齢 ・・・(1) |
結論から紹介しますと、地球と隕石はほぼ同時に誕生したと判断されるので、地球の年齢は約45.5億年と結論されています。では、なぜ、地球と隕石はほぼ同時に誕生したと判断することができるのでしょうか。それには、ヨウ素が深く関わっています。
現在の地球に存在するヨウ素のほとんど全てがヨウ素127(53個の陽子と、74個の中性子を持つ)です。しかし、恒星の進化のプロセス(ヨウ素の場合、超新星爆発)で、ヨウ素129(53個の陽子と、76個の中性子を持つ)も合成されていることが、理論的に示されています。現在の地球には、この様なヨウ素129は存在しません。なぜならば、ヨウ素129は、約1700万年で半分のペースで、クセノン129へ変化するからです。数千万年という短時間(地球の年齢との比較)の経過で、ヨウ素129の検出は不可能になります。(ヨウ素129の様に、合成されても現在では検出されないものを消滅核種といいます。)しかしながら、ヨウ素129が変化して生成されたクセノン129を含んでいる物質が見つかれば、その物質にはヨウ素129が存在していたと結論できます。1960年、米国のレイノルズは隕石に含まれているクセノンを分析し、ヨウ素129起源のクセノン129を発見しました。その後、1980年代後半になると分析技術が向上し、地球の深部(マントル起源)の物質からも、ヨウ素129起源のクセノン129が発見されました。これらの観測事実は、地球と隕石の年齢の差は数千万年以下であり、両者はほぼ等しいと考えてよいことを示しています。 |
隕石の年齢 = 約45.5億年 ・・・(2) |
火星隕石などを除けば、ほとんどの隕石の形成年代は約45.5億年です。石質隕石(コンドライトも、エコンドライトも)も、石鉄隕石も、そして、鉄隕石も、形成されたのは約45.5億年です。隕石の種類によらないところから、約45.5億年前に、何か重大なイベントが起こったと考えられるわけです。
よって、(1)と(2)の関係式より、地球の誕生は約45.5億年と決めることができます。月の岩石で最も古い岩石(ジェネシス・ロックと呼ばれている)の年代も約45.5億年であり、上記の結論を支持しています。地球、月、そして、隕石が誕生した約45.5億年の重大なイベントとは、太陽系の誕生をだったわけです。
ところで、古い本(それを参考にしたHP)には、海底堆積物や玄武岩、大規模な鉛鉱床の鉛の分析から、地球の年代を45億年とする説が記載されています。これらの物質が地球全体を代表している意味づけはなく、後の分析では地域差が観察されるなど、現在では議論の対象とされていません。 |