北朝鮮の核施設にて、プルトニウムを精製するために、使用済み核燃料が処理されている可能性を示す証拠として、クリプトン85(陽子36個、中性子49個を持つ)が検出されたという報道がありました。ここで少し解説しましょう。
プルトニウムは天然に存在しません。天然のウランのほとんど(99.275%)を占めるウラン238(陽子92個、中性子146個)を使って、原子炉内で生産されています。ウラン238にエネルギーレベルの低い中性子(熱中性子という)を照射すると、ウラン239が生成します。ウラン239は直ぐにネプツニウム239に変化し、ネプツニウム239も直ぐにプルトニウム239に変化します。プルトニウム239は中性子照射で核分裂反応を起こすので、原子爆弾に使えます。長崎に投下された原爆には、プルトニウム239が使用されていました。
天然のウランにはウラン235が0.72%含まれています。ウラン235に熱中性子を照射すると、核分裂が起こります。この核反応は原子力発電に利用されています(原子爆弾にも利用できます。広島に投下された原爆にはウラン235が使用されていました)。ウラン235の核分裂で生成した原子の約0.293%がクリプトン85です。クリプトンは気体元素であり、化学反応性も極めて低いため、使用済み核燃料を原子炉から取り出すと、容易に大気中に放出されてしまいます。クリプトン85は天然には存在せず、半減期(半分に減る時間)が約11年もあるため、原子炉から使用済み核燃料を取り出したことを示す指標になります。 |