ホーム

ランタン

元素記号:La 英語名:Lanthanum

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

57

138.9055

921

3457

0.4460

 ランタンは銀白色の柔らかい金属です。地殻には 32 ppm(0.0032%)ほど存在します。ランタノイド(コラム参照)、あるいは希土類元素(コラム参照)と呼ばれる元素のひとつです。1839年、スウェーデンのモサンダーは、自分の師匠ベルセーリウスが発見したセリウムの化合物を化学処理し、未知の元素が含まれていることを発見しました。元素名ランタンは、ギリシャ語のlanthanein(隠れるの意)に由来しています。
 モナズ石(CePO4)とバストネス石{(Ce,La)(CO3)F}がランタンの鉱石です。精製の途中で得られる希土類元素の混合物(ミッシュメタルと呼ばれています。ランタン、セリウム、ネオジムが主成分です。)は安価なため、ガラスの研磨剤や、陶磁器の着色剤として使用されています。ミッシュメタルと鉄の混合物(発火石という)には衝撃で火花を生じる性質があり、使い捨てライターにも使用されています。ちなみに、発火石には30%ほどのランタンが含まれています。ランタンの最も注目されている利用例は、水素吸蔵合金(コラム参照)の原料として、ニッケル水素電池での利用です。ランタン138(陽子:57個、中性子:81個)は時間と共にセリウムとバリウムへ変化します。これを利用して岩石の年代が求められていますが、ランタン138が変化する割合がたいへん遅く(1000億年で半減するペース)、生成されるセリウム138とバリウム138は微量であるため、利用できる試料は限られています。

(Ce,La)(CO3)F
バストネス石
バストネス石
Mountain Pass, San Bernardino Co., California, U.S.A.

コラム「ランタノイド」
 ランタノイドとはランタンのようなものという意味です。原子番号57のランタンから原子番号71のルテチウムまでの15元素(下表参照)が非常によく似た化学的な性質を持っていることから、15元素をまとめて、ランタノイド(原子番号が一番小さいランタンが代表)と呼んでいます。元素の周期表では全15元素が1カ所に配置されるべきですが、見づらいので、周期表の下欄に掲載されています。

コラム「希土類元素」
 ランタノイドは希土類元素とも呼ばれています。この呼び名は英語の Rare Earth Element (略してREE)の和訳です。発見当時、精製後に得られる量が少なかったため、ランタノイドの存在量が少ないと考えられていたのが、呼び名の由来です。
 では、存在濃度はどの程度でしょうか。ランタノイドの地殻中の平均濃度を下表にまとめました(プロメチウムには安定な原子が存在していません)。一番多いセリウム(68 ppm)は亜鉛(70 ppm)とほぼ同じです。一番少ないツリウム(0.48 ppm)でも、金(0.0011 ppm)や銀(0.07 ppm)よりも豊富です。希土類元素という呼び名は、現在では、不適切かもしれません。しかし、ランタノイドは化学的な性質が非常によく似ているため、見つかった頃(19世紀)には、ランタノイドを効率よく精製することは出来ませんでした。精製する際、作業を繰り返すうちに回収量が大きく減少しました。そのため、ランタノイドは希少な元素であると誤解されたのです。
 ところで、ランタノイドにスカンジウム(Sr)とイットリウム(Y)を追加した17元素を、希土類元素と呼ぶことがあるので、注意が必要です。スカンジウムとイットリウムは化学的な性質がランタノイドに似ているのが、理由です。実際、ガドリン石という一種の鉱物から、イットリウムとスカンジウム、そして、8つのランタノイドが発見されています。

ランタノイドの地殻中の平均濃度(1ppm = 0.0001%)

原子番号

元素名

原子記号

地殻中の濃度(ppm)

57
 ランタン

La

32

58
 セリウム

Ce

68

59
 プラセオジム

Pr

9.5

60
 ネオジム

Nd

38

61
 プロメチウム

Pm

-

62
 サマリウム

Sm

7.9

63
 ユウロピウム

Eu

2.1

64
 ガドリニウム

Gd

7.7

65
 テルビウム

Tb

1.1

66
 ジスプロシウム

Dy

6

67
 ホルミウム

Ho

1.4

68
 エルビウム

Er

3.8

69
 ツリウム

Tm

0.48

70
 イッテルビウム

Yb

3.3

71
 ルテチウム

Lu

0.51

Y2FeBe2(SiO4)2O2

ガドリン石

ガドリン石
愛媛県 北条市 高縄山

コラム「水素吸蔵合金:LaNi5
 多くの金属の表面で、水素ガス(水素分子)は水素原子に分解し、水素原子は金属と反応して化合物を形成します。水素原子は小さいので、金属の隙間に侵入することが出来ます。これが金属が水素を貯める仕組みです。水素を貯め込んだ金属を加熱すると、水素の化合物は分解し、金属から水素ガスが放出されます。ある種の金属の場合、容易に大量の水素を内部にため込み、少ない加熱で水素ガスを放出します。このような金属は水素吸蔵合金と呼ばれています。代表的なものとして、鉄・チタン合金(FeTi)、ランタン・ニッケル合金(LaNi5)、マグネシウム・ニッケル合金(Mg2Ni)、ジルコニウム・バナジウム合金(ZrV2)などが知られています。
 水素吸蔵合金は安全な水素の保管方法として研究され、アポロ宇宙船に搭載された燃料電池(水素と酸素を反応させて、電気と水を得る電池)にも、ランタン・ニッケル合金が利用されていました。現在、最も普及している水素吸蔵合の利用物は、ニッケル水素電池です。マイナス極にランタン・ニッケル合金が使用されています。ニッケル水素電池は充電が可能な二次電池で、充電スピードが早く、寿命が長い高性能な電池です。デジカメや電動自転車のほか、ハイブリッド・カー「プリウス」や二足歩行ロボット「アシモ」でも利用されています。

隣接元素
イットリウム
バリウム ランタン セリウム
アクチニウム

  

Copyright (C) 1996-2007 iElement. All Rights Reserved.