18世紀には、大気には少なくとも2つの成分が含まれていると、すでに判明していた。生命活動と燃焼を持続させる成分(酸素のこと)と、それら停止させる成分(窒素のこと)である。後者の成分は、azote(生命活動が保持できないという意味のフランス語)と名付けられた。ドイツ語(Stickstoff)やオランダ語(Stickstof)は同じ意味である。日本名の窒素も、それに基ずく。窒素の英語名Nitrogenは窒素を主成分とする硝石(しょうせき)(KNO3)のフランス語nitrumにちなんでいる。
窒素を主成分とする鉱物には硝石(KNO3)とチリ硝石(NaNO3)がある。しかし、存在量の多い造岩鉱物で窒素が主成分となることはない。窒素の反応性が弱いのが原因であろう。ところが、酸素が不足している環境で生成された隕石であるエンスタタイトコンドライトには、窒素を主成分とする鉱物が多数含まれている。反応性に富む酸素が不足することによって、窒素も鉱物を形成することが可能になったのである。 |