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オスミウム

元素記号:Os 英語名:Osmium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

76

190.23

3054

5027

0.675

 オスミウムは青白色の光沢のある硬い金属で、耐食性に優れた白金族元素のひとつです。地殻には平均で 0.0004 ppm (0.00000004%)しか含まれていません。比重は22.6もあり、最も重い物質の一つです。そのため、大部分のオスミウムは地球深部(コア)に存在していると考えられています。オスミウムは、1803年、イギリスのテナントによって、白金鉱石からイリジウムと共に発見されました(コラム参照)。元素名はギリシャ語の osme (臭いの意)に因んでいます。なぜ、臭いに因むかと言えば、実験で生成した未知の化合物(オスミウムの化合物)を酸処理したところ、強い臭気(オゾンのような臭い)を放つ気体(四酸化オスミウム:OsO4)が発生したからです。オスミウムは容易に酸素と反応する金属で、粉末状のオスミウムは室温でも(塊状では約200℃で)酸素と反応して、有毒な四酸化オスミウム(気体)へと変化します。
 オスミウムは自然白金から分離されているほか、ニッケル鉱山でも、副産物として回収されています。自然オスミウム(イリジウムとの合金である場合が多い。以前はイリドスミンと呼ばれていたが、現在では含有量の多い元素名を用いて自然オスミウム、あるいは、自然イリジウムと呼ばれている。)も利用されています。オスミウムは単独での用途はほとんどなく、合金として用いられる金属です。オスミウムを添加した合金は摩擦に強く、電気スイッチの接点などに利用されています。オスミウムとイリジウムの合金は耐食性と耐久性が高く、万年筆のペン先に使用されています。オスミウム187(陽子76個、中性子111個)には、レニウム187(陽子75個、中性子112個)が、420億年で半減するペースで変化した成分が含まれており、年代を求めること(レニウム-オスミウム法)が可能です。両元素とも鉄の多い鉱物に濃縮しているため、この年代法は鉄隕石の年代測定に利用されており、興味深い結果(コラム参照)が報告されています。

自然白金 自然オスミウム
自然白金 自然オスミウム

コラム「テナントの功績」
 化学者にとって、新元素の発見は生涯で最大の功績となることが多いのですが、テナントの場合は異なっています。彼の最大の功績は、ダイヤモンドがグラファイト(黒鉛)と同じ炭素でできていることを証明したことだと言われています。ダイヤモンドと白金鉱石の研究には、一見、関係がないように思えるのですが、ダイヤモンドの研究がオスミウムとイリジウムの発見に重要な役割を果たしました。
 白金鉱石を王水に溶かすと、黒色の物質が溶け残ります。当時の化学者の多くは、溶け残りの正体はグラファイトであり、不純物として白金鉱石に含まれていたのだと考えていました。テナントも同様の実験を行い、黒い物質を研究しました。その時、ダイヤモンドの研究経験が役に立ったのは言うまでもありません。すぐに、グラファイトではなく、別の金属であることに気が付きました。そして、オスミウムとイリジウムを発見することができました。
 自然白金に含まれているオスミウムとイリジウムは、通常、合計でも1%以下です。他の白金族元素よりも、かなり、少なくなっています。もし、テナントが白金鉱石の研究を行わなかったならば、両元素はグラファイトと勘違いされてしまい、発見が遅れたのではないでしょうか。

コラム「鉄隕石の結晶固化年代」
 レニウム-オスミウム法で求められた鉄隕石が固まった年代(固化年代)を、鉄隕石のグループ別に、下表にまとめてみました。鉄隕石のグループ分けには、内部構造による分類と、金属元素の濃度による分析があります。ここでは金属元素の濃度でグループ分けを使用します。

レニウム-オスミウム法で求められた鉄隕石の固化年代
鉄隕石グループ グループに属する隕石の一例 グループの固化年代(億年)
氓`B-。CD キャニオン・ディアブロ隕石 45.4±0.2
AB シホテアリーン隕石 45.4±0.1
。AB ケープ・ヨーク隕石 45.5±0.1
「A ギベオン隕石 44.5±0.2
「B チンガー隕石 45.3±0.3

 表を見ると、ほとんどの鉄隕石グループが約45.5億年という年代を示しています。太陽系は約45.5億年前に誕生しました。よって、多くの鉄隕石グループに属する鉄隕石は、太陽系が誕生した時に固まったことを示しています。もう一度、表をよく見てください。ギベオン隕石の属するグループ(「A)の固化年代は、それよりも、約1億年ほど小さくなっています。つまり、グループ(「A)の鉄隕石は、太陽系が誕生して、約1億年後に固まったことになります。このグループの鉄隕石はゆっくり固まったのでしょうか。鉄隕石が冷えて固まる速度は、鉄隕石でよく見かける縞模様(ウィドマンシュテッテン構造)の幅で見積もることができます。それによると、グループ(「A)の鉄隕石が冷えて固まる速度は他の鉄隕石グループのよりも早い、つまり、他の鉄隕石グループよりも素早く固まることが判明しています。よって、ゆっくりと固まったとは考えることができません。では、どう考えればよいのでしょうか。おそらく、一度固まった鉄隕石が、衝突などの影響で溶け、その後、再び固まったために、約1億年ほど若い年代を示すのではないかと、解釈されています。

隣接元素
ルテニウム
レニウム オスミウム イリジウム
ハッシウム

  

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