テクネチウムは人類が最初に製造した人工放射性元素です。1936年にイタリアのセグレによって製造が試みられ、翌年に存在が確認されました。命名されたのは1947年で、元素名はギリシャ語のtechnikos(人工の)に因んでいます。テクネチウムは銀灰色の金属ですが、製造と保管は粉末状態で行われています。テクネチウムには安定な原子は存在しません。一番寿命が長いテクネチウム98(陽子43個、中性子55個を含む)でも、420万年で半減するペースで壊れていきます。よって、例外(コラム参照)を除いて、地球に天然のテクネチウムは存在しません。
テクネチウムは体内に注入可能な放射性元素として、医療の分野で重宝されています。使用されるテクネチウムは、中性子を照射されたモリブデンが壊れて生成します。生成直後のテクネチウムからはガンマ線が放射されますが、そのエネルギーレベルは低く、放射される時間も短いので、人体への影響は少なく、ガンマー線の透過性を利用して、人体内部を診察することができます。脳梗塞や心筋梗塞を治療するときに、血管が詰まっている部分を発見するために、患者に投与する血流測定剤には、テクネチウムが含まれています。腫瘍の骨転移部を特定する骨イメージング剤にも、テクネチウムが使用されています。 |