バナジウムは地殻に約0.02%ほど存在しています。銀白色で柔らかく、延性に富んだ金属です。1801年、メキシコのデル・リオが発見しましたが、不運が続き、学会で認められる機会を失ってしまいました(コラム参照)。1830年、スウェーデンのゼフストレームは、同国産の鉄鉱石から生産される延性に富んだ鋼材を分析して、新しい元素バナジウムを発見しました。名前はスカンジナビアの女神ヴァナディス(Vanadis)に因んでいます。
バナジウムの鉱石として利用されている鉱物は、バナジン鉛鉱{Pb5(VO4)3Cl}とカルノー石{K2(UO2)2(VO4)2・3H2O}です。塩素と炭素と共に加熱することによって発生する三塩化バナジウムをマグネシウムと反応させて、バナジウムを分離します。
精製されるバナジウムの多くが鉄鉱に添加されて、バナジウム鋼の生産に消費されています。バナジウム鋼は衝撃や腐食に強く、切削用器具やバネに使用されています。また、バナジウムは体内では脂肪の燃焼に関わっている元素です。参考までに、バナジウムの多い食品は、そば、パセリ、大豆、紅花油、卵、小魚です。また、富士山のわき水には高濃度のバナジウムが含まれており、糖尿病の予防に効果があると言われています。 |