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バナジウム

元素記号:V 英語名:Vanadium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

23

50.9415

1887

3377

293

 バナジウムは地殻に約0.02%ほど存在しています。銀白色で柔らかく、延性に富んだ金属です。1801年、メキシコのデル・リオが発見しましたが、不運が続き、学会で認められる機会を失ってしまいました(コラム参照)。1830年、スウェーデンのゼフストレームは、同国産の鉄鉱石から生産される延性に富んだ鋼材を分析して、新しい元素バナジウムを発見しました。名前はスカンジナビアの女神ヴァナディス(Vanadis)に因んでいます。
 バナジウムの鉱石として利用されている鉱物は、バナジン鉛鉱{Pb5(VO4)3Cl}とカルノー石{K2(UO2)2(VO4)2・3H2O}です。塩素と炭素と共に加熱することによって発生する三塩化バナジウムをマグネシウムと反応させて、バナジウムを分離します。
 精製されるバナジウムの多くが鉄鉱に添加されて、バナジウム鋼の生産に消費されています。バナジウム鋼は衝撃や腐食に強く、切削用器具やバネに使用されています。また、バナジウムは体内では脂肪の燃焼に関わっている元素です。参考までに、バナジウムの多い食品は、そば、パセリ、大豆、紅花油、卵、小魚です。また、富士山のわき水には高濃度のバナジウムが含まれており、糖尿病の予防に効果があると言われています。

Pb5(VO4)3Cl
バナジン鉛鉱
Mibladen, Morocco

コラム「不運な幻の第一発見者」
 メキシコの鉱物学者デル・リオは、メキシコ北部にある鉱山で見つかった褐色の鉛鉱物(バナジン鉛鉱のこと)を分析し、未知の元素が含まれていることに気づきました。新元素を含む化合物の色調が、クロム化合物のように多彩であったことより、新元素に「パンクロミウム」と名付けました。
 デル・リオは新元素の発見を確認してもらうために、パリの研究機関へ、標本と自分の研究をまとめた報告書を郵送しました。ところが、不幸なことに、輸送船が遭難してしまい、標本のみがパリに届きました。標本にはクロムとの類似性を簡単に記したメモだけが添付されていました。そのため、新元素発見の報告は無視されてしまいました。
 次にデル・リオはベルリンの博物館へ標本を送って、新元素存在の確認を依頼しました。ところが、また、不運な事態が発生。ラベルを取り違えて、別の標本(クロム酸鉛)のものを添えてしまいました。そのため、新元素の存在を確認してもらうことが出来ませんでした。研究が認められなかったため、デル・リオは自信を失いました。そして、新元素と考えた元素の正体はクロムであったと考えるようになったのでした。

隣接元素
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チタン バナジウム クロム
ニオブ

  

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