18世紀の初頭、米国のウィンスロップはニューイングランドの鉄鉱山から新種の鉱物を発見し、コルンブ石{(Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6}と名付けました。1734年、コルンブ石は大英博物館へ送られましたが、しばらく標本室に放置されていました。1801年、鉱物標本の点検をしていたハチェットによってコルンブ石が分析され、未知の元素(ニオブ)の酸化物が含まれていることが判明しました。元素名は鉱物名に因んで、コロンビウム(元素記号はCb)と命名されました。
これで終われば話は簡単でしたが、1802年に化学的な性質がよく似た新元素タンタル(Ta)が発見され、コロンビウム(ニオブ)とタンタルは同じ元素であると考えられるようになりました。1809年、コルンブ石とタンタル石{(Fe,Mn)(Ta,Nb)2O6}を分析したウォラストンは、コロンビウムとタンタルは同じ元素であると発表し、コロンビウムは廃名となりました。
1846年、ドイツのローゼはコルンブ石とタンタル石を分析し、タンタルとは別の元素の酸化物を確認しました。未知の元素と考えて、ギリシャ神話に登場するタンタロス王の娘ニオベ(Niobe)に因んで、ニオブと名付けました。その後の研究で、ニオブとコロンビウムが同じ元素であることが1865年に確定しました。米国と英国では第一発見者に敬意を払ってコロンビウムが使用されていましたが、1949年にニオブで統一されました。
ニオブの発見の経緯が混沌としている原因は、タンタルと化学的な性質が似ていることです。天然の鉱物中でも、両者は混在しています。しかしながら、アラシャ鉱山で採れるパイロクロアーにはタンタルがほとんど含まれていません。それ故、非常に優れたニオブの鉱山になっています。 |